登録日:2023.11.14

アパート経営の法人化のタイミングに迷ったら。メリットやコスト、手続きを解説

「アパート経営の法人化のタイミングに迷ったら。メリットやコスト、手続きを解説」のアイキャッチ画像

目次

アパート経営が軌道に乗り、法人化を検討するオーナーも多いのではないでしょうか。
法人化により節税効果が期待できますが、一定のコストもかかるため、法人化すべきか否かは判断が難しいところです。

今回は、アパート経営の法人化のタイミングや、メリット・デメリット、法人化の手続きなどについて解説します。

賃貸アパート経営を法人化した方が良いケース

賃貸アパート経営を法人化するかどうかの判断基準は複数あります。

200万円以上税金を払っている

まず前提として、法人税を適用した方が税負担が低くなる場合に法人化を検討すると良いでしょう。

その判断基準の1つとして、「200万円以上の税金を払っているかどうか」という意見があります。
ただしあくまでも目安であり、金額に強くこだわる必要はありません。
オーナーの資産状況など、他の要素も含めて判断する必要があるため、不動産に関する知識のある専門家に相談することをおすすめします。

総所得金額が1,000万円を超える

税額ではなく、所得から法人化の可否を判断する方法もあります。
一般的には、個人の総所得金額が1,000万円を超える場合は法人化した方が良いとされています。個人の所得税には累進課税制度が採用されているため、所得が増えるほど税額も上がります。

所得税の税率は、次の通りです。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

表の通り、所得金額が1,000万円を超えるあたりで税額が急増し、法人税を適用した方が節税対策になることから、法人化のタイミングと言われているのです。
さらに、個人の場合は所得に対して一律10%の住民税が課税されます。

3年以内に相続する予定がない

上記の2つは所得税の節税対策の観点から見た法人化のタイミングですが、こちらは相続税対策の観点から判断したものです。

法人化してからアパートを取得した場合、3年経過すると、資産の評価額について個人と同じ相続税評価額が適用されます。
そのため、3年以内に相続する予定がなければ、法人化を検討しても良いかもしれません。
なお、所有しているアパートが1~2棟くらいの場合では、法人化のメリットはあまりないかもしれません。

賃貸アパート経営を法人化させるメリット

では、賃貸アパート経営を法人化させるメリットとは何でしょうか。
ここでは、4つのメリットについて解説します。

節税効果

前項で説明した通り、法人化すると節税効果が期待できます。
その要素として、次の3つが挙げられます。

法人税

所得税では累進税制度が採用されているのに対し、法人税の基本税率は所得にかかわらず一定のため、課税所得が大きいほど節税効果は高くなります。

所得の分散

個人の場合、家賃収入から得られる所得はすべて合算され、高い税率が適用されることになります。

一方、法人化すれば家賃収入は法人の利益となります。
家族に役員報酬として所得を分散すれば、各人の所得に対して所得税率が適用されるので、個人の場合よりも節税できます。

経費計上の柔軟性

個人に比べ、法人は経費として計上が認められる支出の範囲が広く、節税につながります。
例えば、出張手当や法人保険の保険料などが経費として計上できます。

相続しやすくなる

所有する不動産をそのまま相続するより、法人化して株式にすることで、財産を分割しやすくなります。

また、法人化は相続税対策としても有効です。
相続税の納税資金を移転させる際、個人で資金を移転させると贈与となり、贈与税が発生する場合があります。
そこで法人から役員報酬という形で移転すれば、贈与に当たらず、贈与税が発生することもありません。

資金調達がしやすくなる

法人化すると、資金調達がしやすくなります。
その理由として、次のことが挙げられます。

法人の信用性

法人は法人登記を行うため、事業や経営を行う組織としての信用性が高まります。
この信用性が銀行や投資家などの金融機関に対しても影響を与え、資金を借りやすくなる傾向があります。

株式や社債による資金調達ができる

法人は株式を発行したり、社債を発行することで資金調達を行うことができます。
株主や社債の発行者に対して将来の利益を約束し、投資家から資金を調達することが可能です。

認知症などもしもの時に備えられる

近年では、認知症などによりオーナーの意思決定ができなくなった時のための対策として、法人化を考えるケースも増えています。

万が一オーナーが認知症になると、預金の引き下ろしや物件の売買などができなくなります。
法人化することでこうしたリスクを避け、個人よりも事業継承がスムーズに行えるようになるでしょう。

賃貸アパート経営を法人化させるデメリット

賃貸アパート経営を法人化させると、主に節税効果などのメリットが得られると解説してきました。
そうは言っても、一概に法人化をした方が良いとは言えません。
それは、次のようなデメリットもあるからです。

設立費と維持費がかかる

法人を設立する場合、設立費と維持費がかかります。

設立の際には、次のような費用が必要です。

  • 登記費用:登記簿への登記手続きには、一定の費用がかかります。
  • 法務関連費用:登記手続きや契約書の作成など、法務関連の費用が必要です。これには、司法書士や弁護士への報酬が含まれます。
  • 印紙税:契約書や株式の発行などの文書に、印紙税が必要です。
  • 資本金:株式会社などの法人形態によっては、最低限必要な資本金が定められています。

維持費として、法人住民税が挙げられます。
法人住民税は、自治体によりますが均等割が最低7万円かかります。
他にも、顧問税理士を雇った場合、報酬は年20万円〜30万円ほどかかると思った方が良いでしょう。

設立費と維持費の詳しい金額については、後の「アパート経営法人化のコスト」をご参考にしてください。

社会保険料がかさむ

法人が雇用している従業員は、労働者として社会保険に加入することが義務付けられており、その保険料は法人が徴収・納付します。
社員がオーナー1人だけでも、法人の社会保険料は発生します。
近年では、中小法人に対する社会保険料の負担が大きくなっています。

健康保険と厚生年金保険を合計すると、標準報酬月額の約30%にも及ぶこともあるのです。
節税対策を考えると、所得分散のために役員を増やしたいところですが、社員が増える分社会保険料も増えてしまうという点に気をつけなければなりません。

売却時の税率や相続税が高くなるケースも

法人化した場合、不動産の売却や相続のタイミングに注意が必要です。
タイミングを間違えると、売却時の税率や相続税が高くなることもあります。

アパートを売却する場合、所有期間が5年を超える物件は、法人の方が税率が高くなります。
というのも、個人では5年を超えて保有した不動産を売却すると税率が下がりますが、法人では所有期間にかかわらず税率が一定だからです。

参考までに、個人の所有期間ごとの税率は次の通りです。

所得の種類所有期間所得税率住民税率
短期譲渡所得5年以下30%9%
長期譲渡所得5年超15%5%

相続税では「賃貸アパート経営を法人化させるメリット」で説明したように、アパートを取得して3年経過すると、相続税評価額の減額ルールが適用されます。
言い換えると、3年以内に相続があると、資産の評価額が時価となり相続税対策にはならないということです。

アパート経営法人化のコスト

アパート経営を法人化するかどうかは、法人化にかかるコストも把握した上で判断すると良いでしょう。
アパート経営法人化にかかるコストは、次の通りです。

設立費(株式会社の場合)

定款認証の手数料5万円
定款認証用の印紙代4万円
登録免許税15万円~
登記手数料数千円
合計25万円程度

維持費

顧問税理士への報酬20万円~30万円程/年
法人住民税7万円〜/年
社会保険料給与による

節税効果が上記のコストを上回る場合、アパート経営の法人化を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、手間という意味でのコストであれば、法人化の手続きは司法書士などの専門家が代行するため、オーナー自身の負担はそこまで大きくないと言えます。

会社・法人のタイプ

法人には、形態による分類と、事業内容による分類があります。
それぞれのタイプを、表で説明します。

まず、形態による分類は次の通りです。

会社のタイプ特徴
株式会社株主が株式を所有し、経営に参加する。
合同会社出資者が出資比率に応じて出資し、合同会社を運営する。
合資会社複数の個人や法人が出資して共同経営する。

アパート経営の法人化では、株式会社か合同会社のいずれかを選択するケースが多いでしょう。
合資会社は、グループ会社の傘下に新しく企業を設立する時に採用されることが多いです。

合同会社は株式会社に比べて、設立費が15万円程度安いです。
ただし、配当や報酬の決定方法などに違いがあるため、安易に設立費だけで決めず、それぞれの特徴を比較してよく検討しましょう。

続いて、事業内容による分類は次の通り。

法人のタイプ特徴
不動産所有法人不動産を所有・賃貸し、収益を得る法人
サブリース法人他の法人や個人から不動産を賃借りし、再賃貸する法人
不動産管理法人オーナーや不動産所有法人の代理として不動産の管理・運営を行う法人

どのタイプを選択するかは、家賃収入やキャッシュフローなど、さまざまな要素から判断する必要があります。
参考までに、所得分散効果が最も高いのは不動産所有法人で、役員報酬として家族に所得を分散できます。
法人化の目的が相続税対策であれば、資産を法人に移転しない不動産管理法人がおすすめです。

法人を設立した後で他のタイプに転換する方法もあるため、経営状況に合わせて柔軟に選択すると良いでしょう。

法人化の流れ

ここからは、法人化をする際の手続きの手順を紹介します。

今回は、株式会社を設立するケースについて、順を追って説明します。
会社設立の手続きは司法書士などの専門家が代行し、2週間〜1ヶ月ほどで完了します。

会社設立の手続き
1.基本情報を決める
2.会社用の実印を作成する
3.定款を作成する
4.公証役場で定款の認証を受ける
5.資本金の払い込みを行う
6.法務局で登記申請する

会社設立後に必要な手続き
1.会社用の銀行口座を開設する
2.各種税について手続きする
3.社会保険について、年金事務所で手続きする

開業準備
1-a.不動産所有法人の場合:事業用資産の所有権を法人へ移転
1-b.サブリース法人・不動産管理法人の場合:各種契約を締結する
2.管理会社または入居者への告知

会社設立の手続き(株式会社の場合)

まずは、株式会社を設立する際の手続きです。

1.基本情報を決める

株式会社設立に必要な基本情報は、次の通りです。

  • 商号
  • 所在地
  • 事業目的
  • 資本金
  • 発起人または出資者
  • 役員
  • 事業年度
  • 公告方法
  • 決算日
  • 株式譲渡制限

役員については、所得分散をさせたい人を任命します。

資本金に関して、法律上では下限がありませんが、十分な運営資金を確保する必要があります。
建築費の4割程度を目安に用意しておくと安心です。

2.会社用の実印を作成する

各種手続きの際に必要な、社印・実印・銀行印を用意します。
実印は、専門の業者に依頼して作成します。

3.定款を作成する

司法書士の指示に従い、定款を作成します。
定款は会社の登記に必要な書類で、最初に決めた会社の基本情報を記載します。

4.公証役場で定款の認証を受ける

会社の所在地と同一の都道府県にある公証役場で、定款認証を行います。
定款の認証手続きには、認証手数料や印紙税などの費用がかかります。

5.資本金の払い込みを行う

代表発起人の口座に、用意した資本金を払い込みます。
この時点で、法人口座の開設はできません。

6.法務局で登記申請する

司法書士の指示に従い、登記申請書類を作成します。
提出先は、管轄の法務局です。

法務局が申請書類を審査し、登記が完了すると法人格が成立します。

会社設立後に必要な手続き

続いて、会社設立後に必要な手続きを解説します。

1.会社用の銀行口座を開設する

会社名義の銀行口座を開設します。

2.各種税について手続きする

会社設立後は、各種税について手続きを行います。

  • 税務署:法人税・消費税・源泉徴収税
  • 各都道府県税事務所や市町村役場:法人住民税・法人事業税・固定資産税

3.社会保険について、年金事務所で手続きする

会社は、社会保険に加入することが法律によって義務づけられています。
中でも健康保険と厚生年金は、会社設立から5日以内に年金事務所で加入手続きを行う必要があります。

開業準備

最後に、開業準備を行います。

1-a.不動産所有法人の場合

税務署にて、事業用資産の所有権を法人へ移転する手続きを行います。

1-b.サブリース法人・不動産管理法人の場合

管理報酬や業務内容を決め、サブリース契約あるいは管理委託契約を行います。

2.共通:管理会社または入居者への告知

管理会社に管理を委託している場合は、管理会社との手続きを行います。
自主管理では、法人化したことを入居者へ告知し、家賃の振込み先の変更等を知らせます。

法人化で効果が得られなかった時の対処法

法人化しても効果が得られなかった場合、休眠会社にするという選択肢もあります。
休眠会社は廃業とは異なり、事業の停止と再開が比較的容易にできます。
手続き自体に費用は発生しませんが、専門家に書類作成を依頼すると手数料が必要です。

具体的な手続きは、次の通りです。

提出先手続き
税務署異動届出書の提出
都道府県税事務所異動届出書の提出
市区町村役場異動届出書の提出
年金事務所・健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
・資格喪失届の提出
労働基準監督署労働保険確定保険料申告書の提出
ハローワーク・雇用保険適用事業所廃止届
・資格喪失届の提出

休業中の税金について、法人税と消費税は基本的には免除となります。
法人住民税は、基本的に納税義務があるものの、自治体に異動届出書を提出することで免除される場合もあります。
ただし、固定資産税の納税義務は発生します。

まとめ:アパート経営の法人化は慎重に

アパート経営の法人化のタイミングは、200万円以上税金を払っている・総所得金額が1,000万円を超える・3年以内に相続する予定がないなどが挙げられます。

法人化の最大のメリットは節税対策ですが、一定のコストもかかるため必ずしも手取りが増えるとは言い切れません。
いずれにしても、法人化の可否については、信頼できる専門家に相談して総合的に判断することをおすすめします。

賃貸経営お役立ち情報に戻る

ECHOESで簡単に空室対策をしませんか?

カンタン10秒!無料で会員登録をする