登録日:2023.11.14

アパート経営の初期費用は?内訳とシミュレーションで必要な自己資産を確認

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目次

アパート経営を始めるにあたって気になるのが、初期費用ではないでしょうか。
「どれくらい資金を用意すれば良い?」「何にどれくらい費用がかかる?」など、さまざまな疑問があるかと思います。

今回は、これからアパート経営を始めようとお考えの方に、アパート経営の初期費用について解説します。

アパート経営を始めるにあたって必要な資金

アパート経営を始めるにあたって必要な資金は、一般的に物件価格の1〜3割程度と言われています。
この資金をアパートローンの頭金とし、後に紹介する「建築費・購入費」や「諸経費」をアパートローンで賄います。

木造アパートの場合、建築費用を7,000万円とすると、700万円〜2,100万円程度の資金が必要ということです。

建築費用については次の項目で詳しく解説しますので、ご参考にしてください。

アパート経営の初期費用で最もかかるのは建築費・購入費

アパート経営の初期費用で最もかかるのは、物件の建築費や購入費です。

建築費

まず、建築費について説明します。
建築費には、建物そのものの「本体工事費」と、水道などのインフラ設備、外構などの工事にかかる「別途工事費」が含まれます。

本体工事費の相場

アパートの「本体工事費」の相場は、当然規模にもよりますが、概ね次の通りです。
ただし、アパートの場合は木造が多く、鉄筋コンクリート造で建築されることはほとんどありません。

構造建築費の相場
木造7,000万円~7,800万円
鉄骨造8,500万円~1億円
鉄筋コンクリート造8,500万円~1億円
鉄骨鉄筋コンクリート造1億1,000万円~1億2,000万円

本体工事費の概算は、坪単価×延べ床面積で計算します。
坪単価の平均は次の通りで、こちらも木造に比べて鉄骨造や鉄筋コンクリート造の方が高くなります。

構造坪単価
木造アパート(2~3階建て)1坪40~60万円前後
鉄骨造アパート(2~4階建て)1坪50~70万円前後
鉄筋コンクリート1坪70~100万円前後

なお、坪単価は、次の要素に影響されます。

  • 構造
  • 間取り
  • 建物の形状
  • 階数
  • グレード
  • 規模
  • 建築エリア

別途工事費の相場

「別途工事費」とは、建物そのもの以外にかかる工事費のことです。
例えば、地盤改良工事や電気・ガス・水道の整備、解体費用などがここに含まれます。
別途工事費は、本体工事費のおよそ10%ほどと言われています。
なお、こちらで紹介している建築費はあくまで相場のため、建築費を確認する際は複数の建築会社から見積もりを取って確認することをおすすめします。

購入費

続いて、アパートの購入費について解説します。

新築アパートの購入費

新築のアパートを購入する場合は、建物そのものの値段+土地の値段が物件価格となります。
建物そのものの値段は、先に紹介した坪単価×延べ床面積で計算します。
土地の値段は、地域によって大きく変動します。
例えば、都内で最も坪単価の高い目黒区では930.2 万円/坪、最も低い青梅市では30.8 万円/坪です。
都心部ほど坪単価が高く、土地値も高くなるため、物件価格も高くなる傾向にあります。

中古アパートの購入費

中古アパートの購入費は、地域や物件の条件などに大きく左右されるため、数千万円から数億円と幅広いです。

一般的に、都市部や交通の便の良い地域では価格が高くなり、郊外や地方の場合は比較的低価格で取引されることがあります。
また、築年数や建物の状態、部屋の広さ、設備の有無なども価格に影響を与えます。

ただし、中古アパートの相場は時期や経済状況によって変動することがありますので、具体的な物件を購入する場合には、不動産の専門家に相談したり、市場調査を行うことが重要です。

アパート経営の初期費用の諸経費

アパート経営の初期費用には、物件の建築費や購入費以外にもさまざまな費用が含まれます。
ここからは、アパート経営の初期費用の諸経費について解説します。

不動産取得税

不動産取得税とは不動産を取得する際にかかる税金で、土地や建物などの不動産を購入した場合に課税されます。
実際に請求されるのは、不動産を購入した半年後から1年半後です。

土地と住宅にかかる不動産取得税の税率は、全国一律で3%です。
ただし、一部の地方自治体では地方税として追加の税率を課す場合もあります。

不動産取得税の課税対象となるのは、土地や建物を取得する際の価額(取得価格)です。
取得価格には不動産の購入価格だけでなく、付帯する諸経費や固定資産税などの負担も含まれます。

なお、一部の条件を満たす住宅の取得に対しては、不動産取得税の減免や特例措置が適用されることがあります。
例えば、住宅用地や住宅の購入、リフォームに対しては減免が適用される場合がありますので、詳細な条件や申請手続きについては税務署や自治体にご相談ください。

登記費用

登記費用とは、不動産の所有権の登記手続きを行う際に発生する費用のことです。
一般的に、30万円〜50万円程度かかると言われています。

主な登記手続きとして、次のようなものがあります。

  • 建物表題登記:建物の所在地や構造などの事項が掲載されます。
  • 所有権保存登記:建物の所有権が誰にあるのかを示します。
  • 抵当権設定登記:アパートローンを組む時に必要な登記です。

建物表題登記を除き、各登記には登録免許税がかかります。

登記登録免許税
所有権保存登記固定資産税評価額(建築費の5~6割程度)×0.4%
抵当権設定登記債権金額(借入金額)×0.4%

この他、登記を行う司法書士へ支払う司法書士報酬が発生します。
こちらは、依頼する司法書士によって金額が変わります。

印紙税

印紙税とは、公文書や契約書などに必要な印紙を貼ることによって課税される税金です。
公的な書類に印紙を貼ることで、その文書が法的な効力を持つことが保証されます。
印紙税が必要な文書は、不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書などです。
印紙税額は、契約する金額によって異なります。

印紙税が必要な文書や税額については、下記の国税庁の書類をご参考にしてください。
印紙税額一覧表(令和5年4月1日以降適用分)|国税庁

各種保険料

アパート経営ではさまざまなリスクに備えて、各種保険に加入することをおすすめします。

中でも、火災保険と地震保険は必須と言えるでしょう。
火災保険は、保険会社や建物の規模によって金額が変わります。
地震保険は単独では加入できないため、火災保険とセットで契約します。
火災保険10年一括払い、地震保険5年付きで契約の場合、30万円~50万円ほどが相場です。

その他、アパート経営に関わる保険として、施設賠償責任保険も挙げられます。
施設賠償責任保険は、アパートの破損で人に危害を与えてしまった場合や、水漏れで入居者に損害を与えてしまった場合などに備えて加入するものです。
金額は建物によって異なりますが、アパート1棟につき月数千円と決して高くはありません。

アパートローンの関連費

アパートローンを借りる際は、次のような関連費がかかります。

  • 事務手数料:ローンを借りる際に金融機関に支払う手数料
  • 保証料:保証会社に支払う保証料

事務手数料には「定額制」と借入額をもとに料金が決まる「定率制」があります。
定額制の場合には、3万円程度が相場です。
保証料は、借入額の2%程度と考えておきましょう。

外注費

アパート経営を始める時は、各分野の専門家へ依頼するのが一般的です。

税理士・弁護士への報酬

アパート経営の際、確定申告や節税対策の提案を行ってくれる税理士、契約書の作成や不動産取引の法務サポートを行ってくれる弁護士にコンサルティングを依頼するオーナーも多いです。
報酬額は事務所や依頼内容によって異なり、時間制となっているケースがほとんどです。
なお、顧問契約を結ぶ場合は月2〜3万円程度ですが、アパート経営の規模が大きくなるほど報酬額も増えます。

仲介会社への手数料

仲介会社は、契約書の作成と管理、入居者の審査の他、管理業務のサポートも行ってくれます。
仲介手数料は契約が成立した際に発生します。
金額は、売買価格×税率+6万円+消費税で、上限が設けられています。

管理会社への手数料

賃貸管理は、次の2種類に分けられます。

  • 入居者管理:入居手続きや契約関連、集金
  • 建物管理:物件のメンテナンス

管理委託手数料は、賃料の5%程度が一般的です。

アパート経営の初期費用シミュレーション

さて、ここまでアパート経営にはさまざまな初期費用がかかることを解説してきましたが、金額にするとどれほどになるのでしょうか。

ここからは、アパート経営の初期費用について、建築する場合と購入する場合に分けてシミュレーションを行っていきます。

なお、今回は各種初期費用の相場を単純計算した上に、推定金額も含まれているため、実際の初期費用とは大きく異なる場合があります。
あくまで一例として、ご参考にしてください。

アパートを建築する場合の初期費用

これまで解説したアパート経営の初期費用を合計すると、以下の通りになります。

木造アパートの場合

建築費(本体工事費)7,000万円~7,800万円
建築費(別途工事費)700万円〜780万円
不動産取得税100万円〜200万円
登記費用30万円〜50万円
印紙代2万円〜10万円
各種保険料30万円~50万円
アパートローン関連費用100万円〜200万円
外注費依頼内容次第
合計約7,962万円〜9,090万円

注目すべきは、アパート建築費が合計の9割程度を占めている点です。
また、諸経費だけで数百万円かかる点にも留意すべきでしょう。

アパートを購入する場合の初期費用

木造アパートの場合

購入費用約5,000万円〜約1億5,000万円/棟
不動産取得税100万円〜200万円
登記費用30万円〜50万円
印紙代2万円〜10万円
各種保険料30万円~50万円
アパートローン関連費用100万円〜200万円
外注費依頼内容次第
合計約5,962万円〜1億5,510万円

アパートを購入する場合でも、購入費が初期費用の大部分を占めます。
また、アパートを建築する場合と同様に、不動産取得税や登記費用などの諸経費がかかります。

アパートローンについて

アパート経営には、多額の初期費用がかかることがお分かりいただけたかと思います。
そのため、自己資金の他、アパートローンを借りるケースがほとんどです。

アパートローンの概要

賃貸物件では、住宅ローンの代わりにアパートローンが借入できます。

対象物件アパートやマンションなどの集合住宅
借入金額1~5億円以内
返済期間35年以内
金利1~5%
担保不動産を担保とする

対象物件

アパートローンは、アパートやマンションなどの集合住宅が対象です。
賃貸用住宅の建築費やリフォーム費用の他、アパートローンの借り換えなどを目的に借入します。

借入金額

アパートローンの借入金額は、一般的に1〜5億円以内です。
購入または建設する不動産の価格に応じて決定されます。
一般的に、不動産の評価額の一部を借り入れることができますが、融資金額や金利は金融機関や借り手の信用状況によって異なります。

返済期間

アパートローンの返済期間は一般的な住宅ローンと同様に長期間に設定されます。
最長でも35年以内に設定されることが多いです。

金利

アパートローンの金利は金融機関によって変わりますが、 1~5%が目安です。
金融機関ごとの金利については、後の項目で解説します。
アパートローンの金利には、固定金利と変動金利の2種類があります。
固定金利は返済期間中に金利が一定で安定していますが、変動金利は金利変動によって返済額が変わります。

担保

アパートローンは、一般的に不動産を担保として提供することが求められます。
金融機関は不動産の評価額に基づいて、融資の可否を判断します。

アパートローンの比率の目安

物件価格のうち、1〜3割を自己資金、残りをアパートローンで用意するのが理想です。
例えば建築費5,000万円のアパートの場合、500万円~1,500万円は自己資金で用意し、3,500万円~4,500万円を借り入れるイメージです。

アパートローンの種類

アパートローンは、各種金融機関から借りることができます。
金融機関ごとの特徴と金利の目安は、次の通りです。

金融機関特徴金利の目安
都市銀行金利は低いが、審査が通りにくい1~2%
地方銀行金利は高いが、審査は通りやすい1~4.5%
信用金庫・信用組合地域密着型2%
日本政策金融公庫審査に通りやすく、固定金利で金利も低め1.2~2%
ノンバンク金利は高いが、審査は通りやすい3~4.5%

アパート経営を始める方に最もおすすめなのは、日本政策金融公庫です。
固定金利で金利も低めなので、リスクの低いアパートローンと言えます。
ただし、アパートローンを借りる目的や、用意できる自己資金などによって最適な金融機関も変わるので、各種金融機関で相談すると良いでしょう。

アパート経営の維持費

アパート経営の費用を考える際は、初期費用に加えて維持費についても把握する必要があります。

維持管理費

管理会社に管理を委託する場合、維持管理費がかかります。
管理会社は、共用部分の清掃や入居者とのやりとりなどの管理を行います。

管理費用は、全面委託管理で5%前後が相場です。
サブリースでは家賃収入の15~20%程度かかるでしょう。

光熱費

共用部分の電気代や水道代などの光熱費がかかります。
アパート1室あたり、年間1万円弱が相場です。
各部屋の光熱費は入居者負担のため、維持費として考える必要はありません。

損害保険料

火災保険や地震保険などの各種保険料は、一括で支払う場合は初期費用として、1年ごとに支払う場合は維持費として考えます。
一括で支払う方が安くなるため、保険料を抑えたいなら一括払いがおすすめです。

修繕費

建物や設備の定期的な修繕や改修、メンテナンスにかかる費用を指します。
不動産は経年劣化や自然災害の影響を受けるため、定期的な修繕が必要です。

小規模修繕の場合、賃料収入の3〜5%程度を見積もっておきましょう。

リフォーム費

入居者の退去後に行う、壁紙の貼り替えや設備のメンテナンスなどにかかる費用です。
また、空室対策として魅力的な物件にするためのリフォームの費用も、こちらに含まれます。

各種税金

アパート経営においては、固定資産税と都市計画税が毎年かかります。
固定資産税と都市計画税は、所有する不動産の評価額に応じて計算されます。

家賃収入に対しては、所得税と住民税も課税されます。
さらに、個人事業主の場合は個人事業税、法人の場合は法人税もかかります。

ローン返済

アパートローンを借りた場合、月々のローン返済が維持費の大きな割合を占めます。
特に変動金利の場合は、金利が上昇しても対応できるよう余裕を持って資金を用意する、綿密に計画することが大切です。

仲介手数料

空室が出た時など、入居者を募集する場合は仲介手数料がかかります。
入居者が決まったら、仲介会社に家賃の半月分を支払います。

募集費用

同じく、空室が出た際にポータルに物件情報を掲載するなどの募集費用がかかります。

退去者が出ると、このように募集費用や仲介手数料、先に紹介したリフォーム費などがかかるため、できるだけ退去者が出ないような工夫が必要です。

アパート経営の費用に関わるリスク

アパート経営には、予想外に収入が得られなかったり、急に費用がかかったりといったリスクもつきものです。
アパート経営を始める際には、こうしたリスクを事前に把握し、備えておくことが大切です。

家賃収入低下のリスク

アパート経営の代表的なリスクと言えば、空室リスクです。
空室が出ると収入が減ってしまうだけでなく、先述したような募集費用やリフォーム費などもかかってしまいます。

空室リスクは、ターゲットの見直しを行う、魅力的な物件にするためのリフォームを行うなどで対策します。
また入居者がいても、家賃の滞納で収入が減ってしまうリスクもゼロではありません。
家賃保証会社を利用するなどで対応しましょう。

修繕費用のリスク

築10年ほど経つと、アパートのさまざまな場所に修繕が必要になってきます。
老朽化したアパートは入居者も集まりにくく、空室リスクにもつながりかねません。

アパート経営に修繕費用はつきものですが、日頃からしっかりメンテナンスをするなど、修繕の規模を可能な限り小さくする工夫が必要です。
また、自然災害による修繕費用のリスクを抑えるためにも、各種保険に加入しておくと良いでしょう。

金利上昇のリスク

アパートローンを変動金利にした場合、金利の上昇を視野に入れましょう。
金利が上昇することで、月々のローン返済額が増えてしまいます。
変動金利は、定期的に見直しをすることでリスクを回避できます。
場合によっては、固定金利への乗り換えも検討するのがおすすめです。

アパート経営の資金を用意する際のポイント

最後に、アパート経営の資金を用意する際のポイントを3つ紹介します。

リスクに備えて余裕のある資金繰りを

前項で紹介した通り、アパート経営では思うように収入が得られない、急な出費が発生するなどのリスクがつきものです。
例えば空室で収入が減ってしまっても、毎月のローン返済や管理費は必ず発生します。

このようなリスクに備えて、初期費用を十分に用意する、満室時にしっかりと資金を貯めておくなど、余裕のある資金繰りが重要です。

長期的な収支を考える

アパート経営では初期費用はもちろんですが、数年先の収支についてもしっかり考えましょう。

収入面では、家賃の下落や空室率、支出面では、金利上昇リスクや維持・修繕費を考慮して事業収支計画を作成します。
事業収支計画はアパートローンの審査でも審査されるため、しっかりと将来を見越して計画を立てましょう。

初期費用を抑えるコツ

初期費用はできるだけ抑えたいと考えるオーナーは多いと思いますが、むやみに安く済ませれば良いわけではありません。
どこに初期費用をかけて、どこを削るか見極めるのがポイントです。

例えば購入費を抑えようと古い物件を選んでも、結局はリフォーム費がかさんだり、入居者が集まらなかったりする可能性が高いです。

一方で、募集費用などは費用を抑える余地があります。
不動産任せにするのではなく、自分で物件情報を掲載することで、費用を抑えながらオーナー自ら物件の魅力を伝えられるでしょう。

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まとめ:初期費用や維持費を把握し、無理のないアパート経営を

アパート経営にはさまざまな初期費用がかかりますが、中でも物件の建築費や購入費が大部分を占めます。
また、維持費も決して安くはありません。

無理のないアパート経営には、初期費用や維持費、またリスクなどをしっかり把握し、長期的な事業収支計画を立てることが大切です。

今回の記事を参考に、ぜひアパート経営の成功を目指してみてはいかがでしょうか。

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